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アンジュシリーズ

アンジュシリーズはシナリオ作者の楓さんが作られたサキュバスの『アンジュ』と冒険者の冒険を描いたシリーズ作品です。全6作。これはプライベートシナリオなので感想を書こうかどうか迷いましたが、好きなので書いちゃいました。なぜ好きかの覚え書きも兼ねて。

さて。

私は楓さんというシナリオ作者が好きです。尊敬していますし、あこがれてもいます。あんなふうに作りたいなぁと思っています。楓さんの何が良いかというと、楽しそうに作っておられることです。これ、簡単そうに見えることだけれども、楓さんの『楽しく作る』と、他の作者様の『楽しく作る』は質が違います。

多くの作者がシナリオの製作を二作三作と続けるに従って、スキルは洗練されていき、作品の緻密さを増していくのですが、それに伴って作品の自然な流れとか荒さを失って、疲れたような臆病なような空気を纏いながらまとまっていくように私には見えます。処女作の天真爛漫さがどこかで放棄されてしまって、シナリオは窮屈になる。それは作っていくうちに何を書くか目標を失うからかもしれないし、技術が洗練されると物語性が邪魔になるからかもしれないし、あるいは何か外的な要因かもしれません。

しかしながら楓さんはもう60作近く作品を発表してなお、初期の自由さが残っています。「私はこう作りたいんだ」という奔放な気持ちよさがあります。しかもこれは初期のころと作風が変わっていないということではなく、確実に製作への理解を備えていて、作者として経験を積み重ねているのに、それが保持されているのです。……逆の言い方をすると、自由さを失わない方向に作者として(意識的かどうかは分からないけれども……たぶん無意識に)進んだということです。素晴らしいことです。

みなさん楓さんはすごい作者ですよ。はい。信仰告白はこれで終わりです。

肝心な作品の話に移ります。アンジュシリーズは他の同氏の作品と違って面白い部分があります。いろいろなことを試してあるところです。楓さんは『何を書くか』という点で不自由しない方のようで、他の作者と違い何もないところからでも次々にシナリオが作れるようです。

そこで自然に注目点が『作風』というところになってくるのですが、アンジュシリーズはこれが万華鏡のように変化していて面白いのです。服を換えて鏡の前に立ってみているように見えます。ゆっくりしたトーンで書いたり、普段は書かない背景物を書いてみたり、心情の描写に力を入れてみたり、かと思うと勢いよく人物を動かしてみたり、とにかくたくさんの方法が試されています。しかし、その中でも楓さんのシナリオだと分かる刻印のようなものがはっきりと示されています。

そのようにいろいろな方法が試されるわけですが、最後は物語の強さが増してきて、作者の本来のスタイルが引きずられるみたいに出てきます。楓さんのもともと持っている物です。少々荒っぽいように見えるけれど、それが物語が要求している強引さです。これが他の作者がやってしまうと荒さが目立って感じるのだけれども、物語の流れの中で行われているので不思議な説得力があるように感じます。楓さんの魅力はここですね。

はい。そういうわけでアンジュシリーズの覚え書きでした。この作品はプライベートシナリオなので、手に入れていない方は楓さんのホームページへどうぞ。

>>Fleur de cerisier
楓さんは私のシナリオ『アリィとふくらしの魔女』の発表においてテストプレイしていただいたり、意見を伺ったりさせていただきました。たいへん感謝しております。
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